手先が不器用で覚えが悪かったものの、親方が本当の父親のように時には厳しく時には観音様のような優しさで技術を教えてくれたんです。
弟子になり10年が経過したころ、独り立ちすることを決意しました。
自分で工務店の社長になって、リフォームや修繕を請け負う会社を立ち上げたんです。
最初こそ親方の口利きで、たくさんのお客様にもめぐまれ経営は順調でした。
そこで二人の社員の職人を雇い、三人体制で会社の経営をすることになったんです。
だが次第に親方が口利きしてくれなくなると、お客様が一向に現れず、見る見るうちに経営は傾いていったんです。
やむなく雇った職人2人もリストラを宣告し、やめてもらうしかありませんでした。
そして問題なのは、資金繰りだったんです。
まさに自転車操業に陥っており、次の支払期日まで資金を調達することができなかったんです。